CADTMパキスタン
ラホール:「債務はパキスタンの重圧になり続けており、貧困と不正義の終わりなき連鎖から抜け出す道を塞いでいます。パキスタンはIMFとのスタンドバイ取極(SBA)契約を終了していますが、未だ難局を乗り越えてはいません。債務の状況はますます深刻なものになっています。
パキスタンの通貨が対米ドルで下落したために、公的債務の額はわずか2011年7月1日から現在までの間に1200億ルピー(13.8億米ドル)も増大しました。パキスタンの公的債務は11兆ルピー(1260億米ドル)に上り、それは4兆5千億ルピー(518億米ドル)の対外債務と6兆5千億ルピー(748億米ドル)の国内債務によって構成されています。憲法により保護される包括的な政府および第三者の債務監査委員会は、パキスタンの対外債務のうち不当な契約を判別し、その状況に対処するための方法と手段を提示するために時間を必要をしています。」
2011年10月14日金曜、債務とIFIsに対するグローバルアクションウィークに応え、Campaign for Abolition of Third World Debt (CADTM)-Pakistan、Women in Struggle for Empowerment (WISE)、World March of Women (WMW) Pakistanがラホール記者クラブの前で合同でデモを行い、上記のような演説を行った。参加者は、国際金融機関(IFIs)の金融政策に反対するスローガンを記したバナーやプラカードを掲げた。また、シュプレヒコールの声も響かせた。
演説において、CADTMパキスタンの中心人物であるSyed Abdul Khaliq氏は、対外債務の多くはAyub、Yehya、Zia、Musharraf将軍の腐敗した独裁体制によって契約されたものであり、独裁者たちはその融資を一般の国民にはほとんど利益とならないようなプロジェクトに使用し、実際のところ、腐敗を増長し不適切な権力の下支えとなった、と述べた。最初の債務を返済できなくなると、パキスタンはさらなる融資と、国の発展を犠牲にするような経済の再構成を強制された。Khaliq氏は、政府に対して債務の返済を凍結し、その資金をデング熱患者の治療と洪水被災者の復興に割り当てることを要求した。
また、パキスタンは海外の債権者への返済に毎年30億米ドルが使われていると述べた。しかしながら、2010/11会計年度の返済目標はさらにそれを上回る54.6億米ドルに上り、その比率は2014年にはさらに増大することなる。その年には、繰り延べされた債務の返済が再開され、750億米ドルの対外債務の重圧を抱え込むことになる。その一方で、パキスタンの国際的信用度は、アメリカが主導する対テロ戦争への度重なる関与が主な原因となって急速に下がりつつある。IMFの最新の研究では、現在28の最貧国が債務危機の高いリスクを抱えている状態である。「累積債務不履行確率(CPD)レポート」では、パキスタンは5番目にランクされている。
Khaliq氏は、パキスタンの対外債務はGDPの約三分の一に相当すると見積もっている。パキスタンは国民一人当たり所得が低く、重債務状態であるにも関わらず、いわゆる重債務貧困国(HIPC)イニシアティヴが適用されない。それは、輸出と海外投資のレベルが比較的高く、公式には中所得国に分類されているためである。パキスタンの債務維持能力はかなり脆弱な状態であり、財政責任および債務上限法で定められた債務対GDP比の上限60%をすでに超えている。こうして債務問題はパキスタンの経済安定をおびやかす唯一の原因となっている。
Women in Struggle for Empowerment (WISE)事務局長Bushra Khaliqは、パキスタンにとって実行可能な他の選択肢として、自然災害により国際収支の大幅な調整のニーズが生まれ、債務免除により利用可能となった資金がそのニーズに応えるのに極めて重要であると考えられる貧困国に対し、国際通貨基金(IMF)(パキスタンの最大の債権者)が債務帳消しを認めるよう、震災復興イニシアティヴ(Post-Catastrophe Initiative)が勧告する方法があると述べた。
2010年および今年のシンドー州での未曾有の洪水は、2800万人の国民に被害を与え、パキスタン経済に最大で400億米ドルの長期的コストをかけることになると見られている。今年(2011年)、パキスタンは国内、対外債務の支払いに9088億ルピー(104億米ドル)を当てることになっており、その額は今年の国家歳入目標の50%、歳出の32.6%に相当することになる。
World March of Women (WMW) Pakistan代表のSara Sohail氏は、国際人権委員会(the International Human Rights Commission)が宣言した緊急状態(State of Necessity)の原則では、人々が最低限必要とするニーズ(保健、教育、食料、飲料水、住居等)を満たすことが不可能な状況に置かれている債務国は、債務および構造調整プログラムを拒否する権利を有すると示されている、と述べた。
国連国際法委員会も同様の立場を取っている。パキスタンの2011年の緊縮予算では、電力および食料への補助金の大幅カットの一方で、軍事支出の大幅な増大、また国際通貨基金が要求する、いわゆる「改革」がセットにされている。年間あたり対外債務の返済に使われる額は、政府の年間保健支出の三倍に相当すると見られている。パキスタンでは、5歳以下の子どもの38%が低体重であり、子どもの死亡率は南アジアで最も高く、人口の54%しか文字の読み書きができない。
CADTMパキスタンのメンバーRabbiya Bajwa氏は、融資が抑圧的な体制に与えられた場所、また、そのお金が一般の人々の利益にならず、むしろ腐敗を強め不適切な権力の下支えになってきた場所には不当な債務が存在する、と述べた。
債務免除は常に借り手の側にとって焦点となってきた。「モラル・ハザード」の概念は、不当な債務の支払い拒否が貸し手の側に規律を守らせ、抑圧的な独裁者への貸し付けを将来的に防止するために必要なものであるという文脈において用いられている。
2011年10月17日、CADTMパキスタン
原文:
http://www.cadtm.org/CADTM-Pakistan-calls-for-Debt翻訳:高丸正人 債務と貧困を考えるジュビリー九州