2010年11月7日日曜日

「ユーロ危機によって、債務に耐え得るかどうかの議論が始まる」

※"でっとばい"第四号の各原稿を分けて掲載しています。『でっと ばい』 第四号PDF版はこちらからダウンロードできます。




「ユーロ危機によって、債務に耐え得るかどうかの議論が始まる」
06 May 2010 by Oygunn Brynildsen and Nuria Molina

 現在、ヨーロッパ各国が直面している債務問題は、対外債務危機の原因と解決方法を模索する各国の政界に新たな議論を巻き起こしている。
 これまで非流動性や債務超過といった危機は主に途上国の問題であり、それらの国々は危機による社会的悪影響に長年苦しんできた。国家の再興には強制的な構造調整の実行が条件とされるため、途上国は非常に困難な状況に置かれている。大抵の場合、社会的支出や公共投資よりも貸し手の要求が優先されるために、貧困の克服や均衡ある発展が阻害されている。
 もはや、債務超過と再編の問題は途上国だけのものではない。この数ヶ月の間に、ヨーロッパではギリシャのみならず周辺のユーロ圏の国々も危機の間際に立たされている。ヨーロッパ連帯メカニズムを始動させるべきとの声に反して、ヨーロッパ各国政府は次に挙げるような重要な議論を先延ばしにし ている。

・現在、周辺諸国の債務を危機的レベルに引き上げている欧州通貨統合の根本的な欠陥、および一部の国の内政問題、世界的金融危機の影響にどのよう に対処するのか。
・これらの危機に対し、どのようにして公平かつ効果的な方法で対応するのか。

ユーロ圏:責任の痛み分けか、あるいは弱肉強食か
 ギリシャの悲劇は深刻な国内問題のみならず、巨大なマクロ経済の不均衡の結果でもある。
 Research on Money and Finance 誌の最新のレポート、「ユーロ圏危機:自分と隣人を貧しくする政策」では以下のように述べられている。「ユーロ圏はドイツの海外経済余剰に侵食され、周辺諸国の経常赤字によって賄われる地域になってきている。」
 ユーロ圏各国は通貨が独立しておらず、財政政策において選択肢が限られているために(安定協定に強く拘束されている)、経済調整の圧力を労働市場 に押し付けざるを得ない。
 レポートはこう続く。「この競争は再統一によって自国の労働者を過剰に搾取してきたドイツの勝利となっている。」
 残念ながら、ユーロ圏はグローバルな金融システムと同じ重大な欠陥を抱えている。両者とも黒字国寄りの姿勢を取っており、黒字国と赤字国の不平衡を補う様ないかなるシステムも考慮されていない。グローバルな金融システムについてのEurodadの最新レポート「積み立てのコスト」で述べられている様に、「こうした政治体制によって、赤字経済と黒字経済のグローバルな不均衡が増大し、世界は不安定になっている。」
 「また、このシステムは世界的な完全雇用という目標に対して不公平かつ矛盾したものであることを証明している」、と国連グローバル金融危機専門委 員会のメンバーの一人は述べる。
 簡単に言えば、グローバル金融システム(またはシステムとは言えないようなもの)とユーロ圏は両者とも「持続不可能なマクロ経済の不均衡に陥りやすく、賃金と労働よりもはるかに金融資産の価値を保護する立場に立っている」、とEurodadのレポートでは強調されている。こうして、最貧国と最も立場の弱い人々はこうしたシステムによって敗者に追いやられるのである。

債務処理手続きが欠けているがゆえのコスト
 危機発生から数ヶ月が過ぎても、ユーロ圏の根本的な問題については何も話し合われないままであり、ギリシャ危機を効果的かつ公正な方法で解決する 手段も見つかっていない。債務問題を処理する秩序だった方法がないために、問題のある国(更に重要なのは、その国における社会的立場の最も弱い人 々)、およびその債権者両方が大きな代償を支払っている。ドイツやその他のユーロ債権国がギリシャの救済策について議論している間にも時間だけは経過し、債務危機は悪化しているのだ。1100億ユーロの救済策が公的支出の大幅カットを条件としているにもかかわらず、エコノミスト達はギリシャがいずれは債務を再構成しなければならなくなると予測している。
 ピサーニ・フェリーとサピア(ブリュッセルに本部を置くシンクタンク・ブリューゲル在籍)はこう述べている。「例え現在検討されている大規模かつ持続的な財政調整が実行されたとしても、本当にこの国(ギリシャ)が債務を完全に返済できるかどうかを疑うに十分な理由がある。」そしてこう続 く、「つまり、ユーロ圏は自身のメンバーの一人の債務再構成をどのようにして処理すべきなのか、という問題だ。」
 欧州政策研究センターのダニエル・グロスとトマス・メイヤーは、「債務不履行の結果起こる必然的な混乱を最小限に留めるメカニズムを作り出すこと が極めて重要だ」と述べている。
 こうしたことは、これまで市民社会団体が途上国の債務危機問題の流れで主張してきたメカニズムと同じものである。
 企業や家族が破産する前に債務を再構成できるようにする企業・個人破産法(例えば、米連邦破産法第11章)と同様の手法が用いられるべきである。 破産を回避するためのこうした手法は、企業と債権者双方の利益に基づくだけでなく、社会の利益に基づくものである。
 国レベルにおいても、債務問題が弊害をもたらす段階に至る前に債務の再構成を認めることで、債権者および国民双方にかかる負担を軽減できるだろう。
 ピサーニ・フェリーとサピアは、「秩序正しい債務削減メカニズムが欠如しているからと言って、債務削減が実行できないとは限らない。それなのに、 各債権国が自国の銀行を後押しし、いつまでも債務完済を主張するために状況が悪化している」、と述べている。

公正な債務処理手続きのために
 Eurodadとそのメンバー団体は、公的債務問題を処理するためには破産手続きを定める必要があると主張してきた。手続きは独立したものでなけ ればならず(特に、IMFやパリ・クラブの影響下に置かれないように)、公平かつ包括的で、すべての債権者を平等に取り扱うものでなければならない。債務処理メカニズムは問題となっている債務の根本的な原因を査定し、債権者の責任を考慮することが必要だ。今後、債務危機を回避するには、債務者だけでなく、債権者にも無責任な行動に対して責任を課すことである
 もっと重要なことは、このような債務不履行の危険性が高い国(もしくは機関)に対して、社会の最も弱い立場の人々の権利と利益を守るために必要な手段を与えるメカニズムが必要である。こうした人々は国家が債務不履行に陥った場合、大抵最も深刻な被害を受けるのだ。
 今回の危機の経験を、公平・透明かつ独自の方法による対外債務問題を対処するグローバルなレベルでのメカニズムを設置するための議論をする機会に 変えていくことが必要である。

原文 http://www.eurodad.org/whatsnew/articles.aspx?id=4122
翻訳 高丸正人 (債務と貧困を考えるジュビリー九州)

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